20160305 第166回三田図書館・情報学会月例会「大学図書館による研究支援とURA」
第166回三田図書館・情報学会月例会に参加した際のメモです(かなり雑なところがありますが)。なお、講演内容のみで、質疑メモはありません。
※私の聞き取れた/書き取れた範囲の内容です。もし、なにか問題がありましたらコメント欄などでお知らせください。
イベント概要
第166回
テーマ:大学図書館による研究支援とURA(University Research Administrator)
発表者:明谷早映子氏(東京大学リサーチ・アドミニストレーター推進室)
天野絵里子氏(京都大学学術研究支援室リサーチ・アドミニストレーター)
日時:2016年3月5日(土)午後2時~4時
場所:慶應義塾大学(三田) 西校舎1階 512教室概要:大学図書館による研究支援に対する関心が高まっている。一方、研究の入口から出口までをサポートするリサーチ・アドミニストレーター(URA)の育成と定着に文部科学省が力を入れている。今回は、2つの大学における URAの活動を通して、大学図書館とURAが連携した研究支援が可能か、研究活動以外の業務で負担が生じている研究者の環境改善に図書館も関わることができるか等について検討する。
三田図書館・情報学会:Mita Society for Library and Information Science
発表の詳細:
明谷早映子氏(東京大学リサーチ・アドミニストレーター推進室)
「研究支援における図書館とURAとの協働の可能性について」
概要:東京大学の図書館は、学生向けにレポート・論文作成や学習・研究に役立つ様々な講習会を実施するとともに、教職員向けにも各種研究力分析ツールの利用方法 についての講習会等を実施している。図書館の活動についての学内的な認知度は高いと推測されるものの、現時点では図書館とURAとの関係が密接とはいいがた い。そこで、図書館とURAが今後どのような態様で協働できるかについて、考察してみたい。
天野絵里子氏(京都大学学術研究支援室リサーチ・アドミニストレーター)
「京都大学におけるURAと図書館との協働」
概要:京都大学学術研究支援室(KURA)は、そのミッションの一つとして「学内組織との連携」を掲げており、図書館とは密接な関係を築いている。協働で実施しているいくつかの取り組みのうち、研究支援に関するワークショップKURA HOURや、リポジトリと研究成果データベースとの連携について具体的に紹介しながら、オープンサイエンスなどの新たなフィールドに対し、組織の枠を越え、どのように効果的な研究支援を行っていくのかについて考える。
明谷氏:「研究支援における図書館とURAとの協働の可能性について」
東京大学の研究支援職育成のための業務研修に同日司会進行の市古みどり氏を講師としてお招きしたのが今回登壇のきっかけだそうです。
東大URAの概要
- 本部3名、12部局に14名、計17名がいる(いまのところ、全員任期付き)。
- 大学によって、URAが本部に集中している場合もあれば、分散している場合もある。東大は後者。
- 業務内容
- 本部URA: 全学的な研究環境の向上、研究活動の質的強化等を目的とした業務 全学を対象とした業務。URA業務研修の開催等(全学職員を対象とした)
- 部局URA: 部局で教員と日常的に協働。部局事務との連携。研究プロジェクト固有の業務。
- 具体的には、研究プロジェクトに紐付いているURAもいる。研究プロジェクト固有のURAもいる。
- 業務例: 部局の研究力の評価・分析。研究コミュニティとの連絡調整等。研究不正対応など(原データ保存)
URAの業務に必要なスキル
URA業務に必要なスキルについては、文部科学省の委託事業として作成されたURAスキル標準が策定されているとのこと。東京大学URAによる解説(URAとは | 東京大学 リサーチ・アドミニストレーター推進室)参照。
以下の(2)と(3)はお金(資金)をもらう前と後。(4)は時系列に関係なく必要なこと。
- (1)情報収集
- 政策情報等の調査分析。研究力の調査分析、研究戦略策定。申請を行う前の調査
- (2)プレアワード
- (3)ポストアワード
- (4)関連専門業務
(1)情報収集 => 研究戦略推進支援業務: 図書館との協働!
- 科学技術情報の基礎知識をどこから得るのか、という窓口としてのURAの存在。
- 研究力調査分析: 論文の投稿状況を把握するとか、強みはどこにあるのかとか。
(2)プレアワード
- ②外部資金情報収集: JST、学振。URAに限らず、どの部局にも扱っている人がいるような業務でもある。
- ⑤申請書作成支援: ドメイン特化の専門用語を羅列したような申請書になっていないか。他分野の人間にもわかりやすく。
(3)ポストアワード
- ③プロジェクトの予算管理: 既に行われていることかも
- ④プロジェクト評価対応関連、⑤報告書作成関連: 研究の結果をわかりやすくまとめる。教員がどんな論文を出したかの業績リスト。配分機関ごとに書式が違うのでその調整を行ったり等。文献管理のための講座を提供したり(ツールの紹介ほか)
(4)関連専門業務
URA業務に図書館が強みを発揮できること
- 政策情報等の調査分析
- 研究力の調査分析
- 研究戦略策定
- 研究プロジェクト企画立案支援
- 外部資金情報収集
- 申請資料作成支援
- プロジェクト評価対応関連
- 報告書作成
(知財関連)
- 産学連携支援
- 研究機関としての発信力強化推進
- 研究広報関連
- イベント開催関連
- 倫理・コンプライアンス関連
明谷さんの意見:
- まあ論文の書き方支援みたいなのは既に図書館がやっているし、研究者がそれぞれやっていると大変だし質の問題もあるので、という言及あり。
- すべてのスキルを備えた人はいない。良い意味で何でも屋(自身の強みを発揮して何でもやる)ことがURAの仕事だと思う。
- 各省庁にお金を出してくれとお願いする、概算要求の手伝いをする、研究成果の発信をするイベントのお手伝いをする人などがいる。
明谷さんの業務内容:
- URAによる研究支援体制の構築: URA業務研修の開催、部局の特性を活かした研究支援体制の整備支援
- コンプライアンス関連: 研究に関連する不正行為の防止支援、その他関連業務(新聞で負の面で話題になった研究者が出た時とか。その他、法的なアドバイスを行う場合も)
URA業務研修とは?
- 教職員
- 研究支援に興味のある教職員に対して、URA候補者ということで一定のスキルを蓄えてもらうべく講習をする(URA講習研修基礎コース)
- リサーチ・アドミニストレーター(URA)
- シニア・リサーチ・アドミニストレーター(Senior URA)
URA業務研修での受講者アンケートから:
- 図書館スタッフに研究支援をしてもらう可能性に関する気付きがあった
- 研究分析についての技術・知識をもつ図書館人とのつながり方についての気付きがあった
- 他方、図書館員やデータベース講習会に携わる職員からの意見としては、研究協力業務を行う職員が日常業務を行う際にどのような業務に感心を持っているか知りたいとの要望。(URA業務研修を受講して)今後一緒に活動・協力できそうなことがたくさんありそうという意見があった。
研究倫理教材コンテストの実施
大きく2パターンがあった
- 全教員、学生に対して共通のこと
- 分野特化のこと: 捏造の考え方(別のところから図を持ってきた場合、生物学だと問題になるかもしれないが、考古学は事情が違うとか。)
参考:
平成27年度 研究倫理教材コンテスト 受賞チーム発表 | トピックス | 東京大学
平成27年度 研究倫理教材コンテスト実施のお知らせ | イベント | 東京大学
図書館員の強みを、研究支援にもっと活かす!
- 研究者の悩みを現場でキャッチするのがURAのしごと。
図書館員の強み(市古氏の資料を参照していた)
- サービスマインド、性質
- 学術情報流通を知っている
- 資料や情報を集めて
保存し 図書、雑誌、電子ジャーナル、手稿、史料など
組織化し
利用に供する 機関リポジトリ・・・
知識・技術をもっている
研究成果の学内広報への貢献として。
- 学生の研究者離れ問題: 日本の科学技術の発展を揺るがしかねない懸案事項
- 壁新聞をやることにしたらしい。ケータイに発信しても見てくれるかどうか分からない。むしろ壁新聞だと自然と目にする(見ざるを得ない)
- 学術的評価の高い雑誌をURAや教員と一緒に数冊選定して、論文掲載の研究の面白さを伝える壁新聞を。
学生側には掲載してもらうことがモチベーションになる。
おわりに
- 図書館員の知識・技術の応用範囲は広い
- 図書館員とURA等の研究支援者との情報交換・意見交換の場が必要である(自戒)
- 特に、研究機関の図書館が保有している情報と図書館員の知識・技術は、研究者・研究支援者に必須のもの
- →ただ、空気のように所与のものになっている場合も
- →図書館員の知識と技術の現在の貢献と将来性を教職員にわかりやすく伝えることに、URAが貢献できないか
- 図書館から積極的に「はみ出して」ください
- お願い: 業務として参加、となると業務でなくなった途端にこなくなるので・・・
天野氏:「京都大学におけるURAと図書館との協働」
ご所属: 京都大学学術支援室(2014年6月からURA)
図書館で研究支援が流行っているらしい。ちょっと前まで学修支援と言っていた気がするけど、、というところから。
『「研究者」でも「事務職員」でもない第三の職種』
京大URAについて
2013年の研究大学強化促進事業
図書館員とURAの比較
- 似ているところ
- 研究者へのより直接的な支援
- 専門性に根ざしたサービス
- 研究に必須のリソース(資金、資料)のマネジメント
- 研究成果・引用情報が業務に必要
- それぞれの得意分野
- 図書館員
- 情報の構造化: 標準化
- 組織力
- 「場」
- 学内外のネットワーク
- 図書館員
-
- URA
- 研究者に近い
- 高度な技術・分析力(同じデータを渡しても、人によっては高度な分析ができる)
- 多様かつ国際的なバックグラウンド
- URA
- 大学図書館による研究支援の弱みと強み
- 強み
- 研究に必須の資料を供給してきた長い経験
- 精緻に整理されたデータ蓄積と公開
- 長期的な経験・視点
- 図書館ネットワーク(組織、ひと)
- 強み
-
- 弱み
- 予算、権限がない(予算は資料に回すのを優先する)
- 動きが遅い(牧歌的)
- 学内の立ち位置(コモディティ化、無理解)
- 弱み
→ 図書館の外との協働が鍵になるのではないか。
cf. ランガナタンの「図書館学の五原則」: 4. 読者の時間を節約せよ(雑用をすることなどに端を発しているのかも?)
-
- URAの弱み(つづき)
学術情報基盤や学術コミュニケーションの専門用語はURAにはさっぱりわからないこともしばしば。図書館には当然だと思われていることを聞かれてもURAには通じないとか。答えられないとか。たとえば、
- ResearchmapとResearchGateはなにが違うのか?
- DOIをつけるとなぜよいのか?
- ORCIDはなぜ必要?
- 学内の資源がなぜ一度に検索できないのか(例: 博物館資料がなぜ検索できないか)
手元のメモはここまでm(_ _)m
尻切れトンボ状態でごめんなさい。別の作業のために手元が完全にお留守になっていました。
その後は、具体的な試みをいくつか紹介されていたように記憶しています。「越境者としてのURA」で締めくくったのかな。
個人的に気になったのは、京都大学でのURAが企画・運用する学内型ファンドの試みの紹介でした(細かい調整が課題で軌道に乗せるところまでは現状至っていないという話だったような気がしますが)。
- K.U.RESEARCH 京都大学研究情報ポータル | ホーム
- 「科研費申請書の教科書
- 執筆エッセンス独自研究(採用/不採用の申請書を調査しエッセンス抽出)
- 修正サンプル掲載(before-afterを示す)
- 学内限定配付(4000人の研究者に配付)
- 公募型資金情報サイト「鎗」(YARI)の運用
- 京都大学アカデミックデイの企画
- "KURA HOUR"(月曜日)