20160305 第166回三田図書館・情報学会月例会「大学図書館による研究支援とURA」

第166回三田図書館・情報学会月例会に参加した際のメモです(かなり雑なところがありますが)。なお、講演内容のみで、質疑メモはありません。
※私の聞き取れた/書き取れた範囲の内容です。もし、なにか問題がありましたらコメント欄などでお知らせください。

イベント概要

第166回
テーマ:大学図書館による研究支援とURA(University Research Administrator)
発表者:明谷早映子氏(東京大学リサーチ・アドミニストレーター推進室)
天野絵里子氏(京都大学学術研究支援室リサーチ・アドミニストレーター
日時:2016年3月5日(土)午後2時~4時
場所:慶應義塾大学(三田) 西校舎1階 512教室

概要:大学図書館による研究支援に対する関心が高まっている。一方、研究の入口から出口までをサポートするリサーチ・アドミニストレーター(URA)の育成と定着に文部科学省が力を入れている。今回は、2つの大学における URAの活動を通して、大学図書館とURAが連携した研究支援が可能か、研究活動以外の業務で負担が生じている研究者の環境改善に図書館も関わることができるか等について検討する。
発表の詳細:
明谷早映子氏(東京大学リサーチ・アドミニストレーター推進室)
「研究支援における図書館とURAとの協働の可能性について」
概要:東京大学の図書館は、学生向けにレポート・論文作成や学習・研究に役立つ様々な講習会を実施するとともに、教職員向けにも各種研究力分析ツールの利用方法 についての講習会等を実施している。図書館の活動についての学内的な認知度は高いと推測されるものの、現時点では図書館とURAとの関係が密接とはいいがた い。そこで、図書館とURAが今後どのような態様で協働できるかについて、考察してみたい。
天野絵里子氏(京都大学学術研究支援室リサーチ・アドミニストレーター
京都大学におけるURAと図書館との協働」
概要:京都大学学術研究支援室(KURA)は、そのミッションの一つとして「学内組織との連携」を掲げており、図書館とは密接な関係を築いている。協働で実施しているいくつかの取り組みのうち、研究支援に関するワークショップKURA HOURや、リポジトリと研究成果データベースとの連携について具体的に紹介しながら、オープンサイエンスなどの新たなフィールドに対し、組織の枠を越え、どのように効果的な研究支援を行っていくのかについて考える。

三田図書館・情報学会:Mita Society for Library and Information Science

明谷氏:「研究支援における図書館とURAとの協働の可能性について」

東京大学の研究支援職育成のための業務研修に同日司会進行の市古みどり氏を講師としてお招きしたのが今回登壇のきっかけだそうです。

東大URAの概要
  • 本部3名、12部局に14名、計17名がいる(いまのところ、全員任期付き)。
    • 大学によって、URAが本部に集中している場合もあれば、分散している場合もある。東大は後者。
  • 業務内容
    • 本部URA: 全学的な研究環境の向上、研究活動の質的強化等を目的とした業務 全学を対象とした業務。URA業務研修の開催等(全学職員を対象とした)
    • 部局URA: 部局で教員と日常的に協働。部局事務との連携。研究プロジェクト固有の業務。
    • 具体的には、研究プロジェクトに紐付いているURAもいる。研究プロジェクト固有のURAもいる。
    • 業務例: 部局の研究力の評価・分析。研究コミュニティとの連絡調整等。研究不正対応など(原データ保存)
URAの業務に必要なスキル

URA業務に必要なスキルについては、文部科学省の委託事業として作成されたURAスキル標準が策定されているとのこと。東京大学URAによる解説(URAとは | 東京大学 リサーチ・アドミニストレーター推進室)参照。

以下の(2)と(3)はお金(資金)をもらう前と後。(4)は時系列に関係なく必要なこと。

  • (1)情報収集
    • 政策情報等の調査分析。研究力の調査分析、研究戦略策定。申請を行う前の調査
  • (2)プレアワード
  • (3)ポストアワード
  • (4)関連専門業務
    • 研究のどの段階でも専門的な知識を発揮しないといけない、というものがまとめてある。知財関連、産学連携支援(契約とか)、研究広報関連(イベント開催)、倫理コンプライアンス(学生に論文の書き方、不正のないデータの取扱講習会など)

(1)情報収集 => 研究戦略推進支援業務: 図書館との協働!

  • 科学技術情報の基礎知識をどこから得るのか、という窓口としてのURAの存在。
  • 研究力調査分析: 論文の投稿状況を把握するとか、強みはどこにあるのかとか。

(2)プレアワード

  • ②外部資金情報収集: JST学振。URAに限らず、どの部局にも扱っている人がいるような業務でもある。
  • ⑤申請書作成支援: ドメイン特化の専門用語を羅列したような申請書になっていないか。他分野の人間にもわかりやすく。

(3)ポストアワード

  • ③プロジェクトの予算管理: 既に行われていることかも
  • ④プロジェクト評価対応関連、⑤報告書作成関連: 研究の結果をわかりやすくまとめる。教員がどんな論文を出したかの業績リスト。配分機関ごとに書式が違うのでその調整を行ったり等。文献管理のための講座を提供したり(ツールの紹介ほか)

(4)関連専門業務

  • ③産学連携支援: 契約関連
  • 知財関連: 会社とのかかわり。商品化・製品化。論文として学生に発表させたい。知財化していないのに発表すると特許にならないので要対応
  • ⑤研究機関としての発信力強化推進: 研究成果のPR、説明をどのようにおこなっていくか。
  • ⑥研究広報関連、⑦イベント開催: 研究成果、次の研究の発展につなげるような仕事。
  • ⑧安全管理関連: 薬品や遺伝子組み換え、動植物の取り扱いなどの法令遵守の知識。
  • ⑨倫理・コンプライアンス関連: 明谷さんの仕事。他部署との連携をはじめ……。
URA業務に図書館が強みを発揮できること
  • 政策情報等の調査分析
  • 研究力の調査分析
  • 研究戦略策定
  • 研究プロジェクト企画立案支援
  • 外部資金情報収集
  • 申請資料作成支援
  • プロジェクト評価対応関連
  • 報告書作成

(知財関連)

  • 産学連携支援
  • 研究機関としての発信力強化推進
  • 研究広報関連
  • イベント開催関連
  • 倫理・コンプライアンス関連

明谷さんの意見:

  • まあ論文の書き方支援みたいなのは既に図書館がやっているし、研究者がそれぞれやっていると大変だし質の問題もあるので、という言及あり。
  • すべてのスキルを備えた人はいない。良い意味で何でも屋(自身の強みを発揮して何でもやる)ことがURAの仕事だと思う。
  • 各省庁にお金を出してくれとお願いする、概算要求の手伝いをする、研究成果の発信をするイベントのお手伝いをする人などがいる。
明谷さんの業務内容:
  1. URAによる研究支援体制の構築: URA業務研修の開催、部局の特性を活かした研究支援体制の整備支援
  2. コンプライアンス関連: 研究に関連する不正行為の防止支援、その他関連業務(新聞で負の面で話題になった研究者が出た時とか。その他、法的なアドバイスを行う場合も)
URA業務研修とは?
  • 教職員
    • 研究支援に興味のある教職員に対して、URA候補者ということで一定のスキルを蓄えてもらうべく講習をする(URA講習研修基礎コース)
  • リサーチ・アドミニストレーター(URA)
  • シニア・リサーチ・アドミニストレーター(Senior URA)

URA業務研修での受講者アンケートから:

  • 図書館スタッフに研究支援をしてもらう可能性に関する気付きがあった
  • 研究分析についての技術・知識をもつ図書館人とのつながり方についての気付きがあった
  • 他方、図書館員やデータベース講習会に携わる職員からの意見としては、研究協力業務を行う職員が日常業務を行う際にどのような業務に感心を持っているか知りたいとの要望。(URA業務研修を受講して)今後一緒に活動・協力できそうなことがたくさんありそうという意見があった。
研究倫理教材コンテストの実施

大きく2パターンがあった

  • 全教員、学生に対して共通のこと
  • 分野特化のこと: 捏造の考え方(別のところから図を持ってきた場合、生物学だと問題になるかもしれないが、考古学は事情が違うとか。)

参考:
平成27年度 研究倫理教材コンテスト 受賞チーム発表 | トピックス | 東京大学
平成27年度 研究倫理教材コンテスト実施のお知らせ | イベント | 東京大学

図書館員の強みを、研究支援にもっと活かす!
  • 研究者の悩みを現場でキャッチするのがURAのしごと。

図書館員の強み(市古氏の資料を参照していた)

  1. サービスマインド、性質
  2. 学術情報流通を知っている
  3. 資料や情報を集めて

 保存し 図書、雑誌、電子ジャーナル、手稿、史料など
 組織化し
 利用に供する 機関リポジトリ・・・
 知識・技術をもっている

研究成果の学内広報への貢献として。

  • 学生の研究者離れ問題: 日本の科学技術の発展を揺るがしかねない懸案事項
    • 壁新聞をやることにしたらしい。ケータイに発信しても見てくれるかどうか分からない。むしろ壁新聞だと自然と目にする(見ざるを得ない)
    • 学術的評価の高い雑誌をURAや教員と一緒に数冊選定して、論文掲載の研究の面白さを伝える壁新聞を。

学生側には掲載してもらうことがモチベーションになる。

おわりに
  • 図書館員の知識・技術の応用範囲は広い
  • 図書館員とURA等の研究支援者との情報交換・意見交換の場が必要である(自戒)
  • 特に、研究機関の図書館が保有している情報と図書館員の知識・技術は、研究者・研究支援者に必須のもの
    • →ただ、空気のように所与のものになっている場合も
    • →図書館員の知識と技術の現在の貢献と将来性を教職員にわかりやすく伝えることに、URAが貢献できないか
  • 図書館から積極的に「はみ出して」ください
    • お願い: 業務として参加、となると業務でなくなった途端にこなくなるので・・・

天野氏:「京都大学におけるURAと図書館との協働」

ご所属: 京都大学学術支援室(2014年6月からURA)
図書館で研究支援が流行っているらしい。ちょっと前まで学修支援と言っていた気がするけど、、というところから。
『「研究者」でも「事務職員」でもない第三の職種』

京大URAについて
  • 現在、職員は24名+α
  • 学術研究支援室と部局URA室が統合
  • 学術研究支援棟」に移転

2013年の研究大学強化促進事業

図書館員とURAの比較
  • 似ているところ
    • 研究者へのより直接的な支援
    • 専門性に根ざしたサービス
    • 研究に必須のリソース(資金、資料)のマネジメント
    • 研究成果・引用情報が業務に必要
  • それぞれの得意分野
    • 図書館員
      • 情報の構造化: 標準化
      • 組織力
      • 「場」
      • 学内外のネットワーク
    • URA
      • 研究者に近い
      • 高度な技術・分析力(同じデータを渡しても、人によっては高度な分析ができる)
      • 多様かつ国際的なバックグラウンド
  • 大学図書館による研究支援の弱みと強み
    • 強み
      • 研究に必須の資料を供給してきた長い経験
      • 精緻に整理されたデータ蓄積と公開
      • 長期的な経験・視点
      • 図書館ネットワーク(組織、ひと)
    • 弱み
      • 予算、権限がない(予算は資料に回すのを優先する)
      • 動きが遅い(牧歌的)
      • 学内の立ち位置(コモディティ化、無理解)

→ 図書館の外との協働が鍵になるのではないか。
cf. ランガナタンの「図書館学の五原則」: 4. 読者の時間を節約せよ(雑用をすることなどに端を発しているのかも?)

    • URAの弱み(つづき)

学術情報基盤や学術コミュニケーションの専門用語はURAにはさっぱりわからないこともしばしば。図書館には当然だと思われていることを聞かれてもURAには通じないとか。答えられないとか。たとえば、

  • ResearchmapとResearchGateはなにが違うのか?
  • DOIをつけるとなぜよいのか?
  • ORCIDはなぜ必要?
  • 学内の資源がなぜ一度に検索できないのか(例: 博物館資料がなぜ検索できないか)
手元のメモはここまでm(_ _)m

尻切れトンボ状態でごめんなさい。別の作業のために手元が完全にお留守になっていました。
その後は、具体的な試みをいくつか紹介されていたように記憶しています。「越境者としてのURA」で締めくくったのかな。

個人的に気になったのは、京都大学でのURAが企画・運用する学内型ファンドの試みの紹介でした(細かい調整が課題で軌道に乗せるところまでは現状至っていないという話だったような気がしますが)。

20160317 研究データとオープンサイエンスフォーラム~RDA東京大会における議論を踏まえた研究データ共有の最新動向~

2016年3月17日のNDLでのイベントに参加しました。最後のディスカッション部分のみですが、手元のメモを公開します。
※私の聞き取れた/書き取れた範囲の内容です。もし、なにか問題がありましたらコメント欄などでお知らせください。

イベント概要

研究データとオープンサイエンスフォーラム~RDA東京大会における議論を踏まえた研究データ共有の最新動向~
(終了しました)

研究データに関する世界的な国際会議である研究データ同盟(Research Data Alliance:RDA)東京大会※がこのたび開催されることとなりました。これを機会に、研究データ共有に関する国内外の最新動向を広く共有するためのフォーラムを開催します。

日本でも研究データに関する動きが最近は加速しつつあります。例えば、ジャパンリンクセンターでは研究データへのDOI登録実験プロジェクトが進み、研究データの共有を目指す新たなコミュニティが広がりつつあります。また、国もオープンサイエンスの推進を前面に打ち出しており、研究活動や図書館活動等における仕事の進め方にインパクトを与えることが予想されます。

こうした潮流をどのように捉えればよいでしょうか?RDA東京大会における議論や国内外の動向を踏まえながら、研究者や図書館員をはじめ様々な立場の人々が共に考えていける場にしたいと考えています。基礎的知識に関する講演もありますので、研究データに興味はあるものの敷居が高いと感じている方も、どうぞお気軽にご参加ください。

研究データとオープンサイエンスフォーラム~RDA東京大会における議論を踏まえた研究データ共有の最新動向~|国立国会図書館―National Diet Library

ディスカッション(質疑応答) 16:40~17:40

司会進行は村山泰啓先生。最初に村山先生による各登壇者発表要点まとめの提示(下記)、その後、ディスカッション。

各登壇者の発表要点まとめ(以下敬称略、内容は村山先生による)
  • (北本) 研究データのオープン化
  • (武田) コミュニティ、DOI、日本vs外国
  • (村山) 国際動向への対応、国内での研究データ基盤
  • (能勢) データ業績、データ出版・データ引用
  • (小野) 相互理解、キュレーション、メタデータ、DCC
  • (近藤) Transdisciplinary, Knowledge action network, Long tail
  • (蔵川) データ本体ではないメタ情報、枠組みや運用に関する話題
  • (池内) データ人材・育成、データサイエンティスト、データキュレーター、キャリアパス、法的枠組み
  • (三角) 図書館員スキル・バックグラウンド、アーカイブの文化、サイエンスと人文・社会
  • (福山) 永続的アクセス(長期保存)
ディスカッション内容(一部漏れあり)

Q. 今日の参加者で図書館員・図書館業務に携わったいる人は?
A. 1/3くらい
Q. 研究者は?
A. 1/3くらい?
Q. 出版関係者?
A. 2,3名
Q. それ以外の人は、、
A. 結構いる。助成機関の人とかかな。

Q. テーマが膨大すぎて突っ込むべきところが分からないが、図書館員の立場として。誰にというわけではないが、図書館員が研究データに関われるかどうか/どこに関わるか、は難しい問題であるが、研究者から信頼される人かどうか(この人に任せていい!というところ)について、どういうスキルや人物であれば任せられるというイメージがあるかどうか
A. (能勢)難しい質問。データを扱う部署の大学図書館員と話したことがあるが、そういう人たちは情報をどう扱うかを普段から認識している。バックグラウンドを話さなくても議論がすぐにできる。そういう部署の人と話したときには、信頼できるとすぐに感じた。図書館で情報を扱っている人であれば特に不安は感じない(大学の中での経験から)。逆に、研究者の中でもデータのオープン化について知らない人がいる。図書館員はそういう人を扱いたくないと思うかもしれない。研究者も図書館員も、オープンサイエンスというキーワードに反応する人であれば共通の土俵に居る気がする。それ以外の人には響かないのかも。
A. (村山)欧米のライブラリアンの話を聞くと、図書館員がコンサルをやっているという話もある。ちゃんとデータをオーガナイズするやり方をアドバイスしてくれる(研究者に対して)というスタンスの議論がある。そうでないと、研究者は、自分の研究が出来て、論文が書けて、データは手元にあるよ、ということにしか関心がない。データ資産を残すということに関してライブラリアンのprofessionやexpertiseであるかと。

Q. コンサルをやっているのは図書館情報学の博士だとか化学の博士だとかを持っていて、さらに図書館員をやっているから任せておけというノリだが、日本のライブラリアンにはなかなか当てはまり難い気がする。かと言ってそういう人が育つのを待っているほどの余裕はない。任せてくれればなんとかするよという立場でも自分自身あるが、浮世絵とか訳わかんないものをこれまでも扱ってきたのだからなんとかなるよといいたいのだが、どういう風にアプローチすれば良いのか
A. (小野)村山さんの話は高度な話。分野によって違うと思う。DIASとかであればデータベースの知識をもっている人もいる。自分たちでデータ管理できてしまう。そういうところでは、データをそんなに預けたいという意識はない。人文系とか、自分たちで管理できないところはニーズが有ると思う。まずはニーズの見極めからはじめたらよいのではないか。その意味で、図書館にデータ保存をやるなということを言っているのではなくて、周辺情報からはじめたらという意味でメタ情報からはじめたらということを話した。仮に自分が図書館員にデータを預けるのであれば、真面目な人だが、(図書館員には)真面目な人が多いと思うので問題ない。あとはインフラとしての安定性や持続性。これはNDLは抜群だと思うし。最低ラインとしては、情報やデータベースの知識が最低限あるほうがよい。民間の業者で全部ふっ飛ばしたとかああいうのはナシ。
A. (近藤)地球研でディスカッションをやった。データライブラリアンの役割ということを話し合った結果、データライブラリアンは2層に分かれるという結果になった。レファレンスとして、どこに何があるかどういった資料があるかということと、そのデータを使うとこういうことができるよということ、の2層。
A. (北本)任せるという時に2つの側面がある。1つはtrust(信頼されているから任せる)。分野を超えるにはtrustが必要だということ、それは重要、美しいやり方。もう1つはあまりhappyではないかもしれないが、苦痛を除くというものがある。苦痛を除くことで任せてもらうというやりかた。一方でデータ公開が面倒と思っている研究者が実は多いはず。そこが実は図書館員がやるという可能性もあるし、もうひとつは、今日の話には出てこなかったが、商業出版社が凄く意識しているところ。苦痛を取り除くのは商業系の人たちのほうが得意。未来としては図書館員がやるか出版社がやるかというところ。trustを築くこと、その一方で苦痛を取り除くこと、を意識するほうがよい。

Q. 医療系に携わってきた身として。日本に一番欠けているのは共同利用型のデータベースだということを30年くらい言ってきた。大きな切り口ではなく、個々の問題に対して異分野の人たちが集まってやらないと具体的なソリューションは出てこないとずっと感じ続けている。その辺りが物足りないと感じたのは、学術会議でもあったが、日本の遅れというのはいつもfollowerになってしまうところ。日本独自のパラダイムシフトが必要(科学技術の進歩や社会科学の考え方による)だが、1962年以降日本発のアイデアは出てきていない。日本発の変える発想が出てこないのはなぜか。そのあたりの話を聞きたい。発想があるのかどうか。
A. (武田)直接の答えにはならないが、RDAのとき面白いと思った出来事。RDAのなかに特殊なグループがあり、農業系のグループがある。小麦のデータの相互運用性みたいなことをやっていて、これは本当に小麦の話をやる。なぜそういった取り組みがあるのかというと、あれはむしろ逆で、農業データをやっている人がRDAをつかってグローバルなデータ共有を実現しようとしている。当事者は農業系の研究者や機関である。あれはむしろRDAを道具にしている感じ(どちらかというと)。分野の研究者や当事者がその気にならないといけなくて、あれはむしろそのひとたちがその気になってRDAをテコにしてグローバルなデータセットをつくろうとしている。RDAのような活動を日本でやろうとしたとき、仕組みは恐らく同じで、フレームワークは用意するけど乗るかどうかはそれぞれの分野の研究者や当事者がその気にならないとダメ。ある意味、こういったものをつくれば、その気になれば、ここに来れば良いことがあるかもしれないよということが言えるかもしれない。いまのところはその程度かなと思う。

Q. 20年くらいアメリカの大学にいて、図書館を使う機会があった。かなり情報は英語で処理していかないと、先ほどのスピーカーのように、言っていることがわからなかったという報告になると思う。皆さんどれくらい英語の文献を読むのに時間を費やしているのか聞きたい。
A. (村山)それはものによって違いますよね。それは国際化するうえでの日本人の国際コミュニケーションのスキルの程度ということ?
Q. スキルというか、データそのものの理解ができないということにたいする懸念
A. (村山)文献からデータを使おうと言う視点?
Q. メタなところで追いついていないのではないかという懸念
A. (村山)それは先程の文脈で、分野によってどのデータがどんなふうに使われていくかということで、適不適があったりモチベーションの違いが遭ったり、、
Q. 自分は人社なのだが、日本は人社について予算も少ないし、人社自体が科学じゃないと仰る方がいて。人社が科学じゃなかったら科学自体が成り立たないのではないかと思う。
要するに、バーっと日本語で文献をみたところ、シンプルな形で書いていて、フォーマットは真似ているが、そこに流れている思想性みたいなのはフォローできていないままやっている印象がある。なので、データばかりになると、何がそのなかに含まれていないのかという議論が非常に大切で。誰が書き手であり、どういうことが保存されていて、それが日本の女性の地位のことを言うと、、データを見ていたら国際的には156位です。それは国会議員の数が全世界で156/18X位。そうするとパブリックスペースでどういう言語が使われているかという歴史まで辿らないといけない。図書館というパブリックスペースのなかでどういったデータが蓄積されていくのか行かないのかという議論に行かないといけなくなる...(後略)
A. (北本)ご質問の話は、デジタル・ヒューマニティーズに関わっている身として、ジェンダーの話はよく出てきて、データが偏っているのではないかという話はある。アーカイブされたデータについて、バイアスがあるのかとかいうのはデジタル・ヒューマニティーズやデジタル・スカラーシップとして分析されるべきこと。だがそういった分析はデータ自体がないと分析できないし、データがある場合に批判的な検討を行うことも重要であるが、今回の議論ではないと思う。ジェンダーやマイノリティーはデジタル・ヒューマニティーズの研究として行なわれるべきだと思う。

Q. 先ほどの議論を今日の趣旨に無理矢理持って行くと、RDAの中で日本のプレゼンスをどうやって高めていくかということに至ると思う。第8回に臨む上で、日本のプレゼンスを示すうえで、今回の出席からの感想を踏まえて、何かできることがあるのかどうか?
A. (村山)東京だから出席した、という人がいるのも事実なので、どれだけ出席できるかどうか。ヨーロッパではデジタル科学基盤の整備プログラムのなかで旅費等が支援されているから出ている部分もあると思う。そういった中でどう考えるべきか。

(コメント?) RDAは情報を貰いに行く場所でない。CODATAのほうが議論など内容としてはよっぽどマトモなので。RDAに乗り込むだけではなくて日本でイベントをやったらいいのではないか(という趣旨だったように思う※筆者の解釈)

Q. NDL電子図書館担当。RDA関係ではないがUCLAのライブラリアンと話をしたときに、UCLAではhumanities macroscopeという(略称huma)人文向けのオープンプラットフォームをつくり、自由にデータを使える、自由にデータを公表できるという紹介があった。大阪大学のシンポジウムでも紹介していた。日本ではなかなかプラットフォームを作るところまで至らないとは思うが、本日話を聞いたなかで、何か使えるよという形にしていくのもひとつのやりかただとおもうし、図書館員的にはメタデータ整備などもやらなければならないが、何か目に見える形でまずやっていくことを考えるのも1つかなあと思う。いわゆる人文以外で何かやっているという事例はあると思うが、サイエンスとしてのhumanitiesも何かできればいいなという感想を抱いた。そういう意味では人文系で何かプラットフォームが動かせないだろうか?お前やれよと言われたらつらいものがあるが。何か考えのある人がいればコメントを。
A. (村山)ある種特定の分野で成果を出すこととプラットフォーム事業をやるということがなかなか調和に時間がかかることである。すぐに効果が目に見えないということがあるかとおもう。質問の趣旨とはずれるかも知れないが、いくつかの議論を踏まえて、整理を兼ねていうのであれば、小麦のデータのWGの話があったように、特定分野で何かやろうという試みもあるのだが、実はそれ以外にRDAなどとは全く関係ないところで、DIASもそうだしライフサイエンス統合DBもそうだし、それぞれ独自に活動して成果をあげているところもある。それと違う部分でのプラットフォーム事業というところでのRDA、G8あるいはG7でトップダウン形式で要望がきている。効用はすぐに見えないが、プラットフォーム事業がそろそろ動き始めないとまずいのではないかと思っている人がいるのではないか。個々の事業における成果を追求していくことが並行しているなかでの、情報学やライブラリアン、図書館情報学的なデータのまとめ方に効果があるということを思っている人がRDAという場で可視化されていると解釈される。ここで出てこない分野は、いずれここに出てくる/つながってくるということを言っている先生もいる。最初はとにかく分野横断でやっていくということを言っている人がいたが、最近はフリースケールネットワークという言葉を使っている人もいる。

Q. 研究者はどこにデータを持っていけばいいのか?再利用するときに、どう再利用されるのかということに対する不安感についてどうするか。人がそこに持っていけるようにする取り組みが重要(中身が見られるのか、見られないのか、あるいはダークアーカイブのような取り組みとか、に関する前置きつきのコメント)
A. (武田)今日1つわかることは、そもそも複数のレイヤーがあって、それぞれの事情ごとに考えないといけないということ。1つは、お互いにどうデータが使われるかという、使い方やライセンスのレベルもあるし、さらにその上には信頼できるかどうかというtrustのレベルもある。ライセンスだけでは解決できないからtrustがいるとか。下側で、データを置きたいときのインフラの話もある。3つ4つの層があって、分野ごとに違う問題だなあと思っている。全体の構造を理解するのが大事なことであって、ただ、理解しただけではアクションにつながらないので、そこは大きな問題。そのためには、ヨーロッパのプロジェクトが興味深いのは、EUDATの方とイベントをやったのだが、情報系の人とドメインサイエンス(極地データの人とか、言語リソースの人とか、個別サイエンスのひと)と共同してプロジェクトを回すことになっていること。情報系は横に繋ぐ(ドメインを越えて繋ぐ)ことをやっていて、ドメインサイエンスの人は縦のつながりで、複数の人たちを取り込んでプロジェクトをやるのがそれぞれのコミュニティのミッションになっていて、この分野ではこれがいるけどこれがいらない、この分野では、といったことを調べている。こちらは公開しないけど保存しておきたいとか。こちらは巨大データだからサイトごとにコピーしたいとか、個別の事情とニーズがある。やっていて分かることがあるはずなので、日本でもある程度の規模のドメインサイエンスのプロジェクトをやる時に、必ず情報系の人間とセットでやることをするとか。悪いパターンは、情報系が単なる便利屋になってしまうことがあると困るので、情報系は情報共有インフラで団結というか、それで1つのコミュニティを作って、このプロジェクトではこういうのがあるからこういう技術を使おうとか、縦と横を繋ぐような研究プロジェクト構成を目指して行って、個別の問題を洗い出して解決するのが遠いようで近道かなあとおもう。ヨーロッパはそれを意識してやっているのではないか。その全体を見ているのがRDAだったりという構造ではないか。研究者を動かしやすいのはある程度の規模の研究プロジェクトが走る時なので、そういうときにうまく仕組みを組み込みたい。どうやったらいいのかはわからないけど。

Q. 図書館情報学の研究者。OAをやっていたが、人社も含めて、論文や著作の形で成果を求められていたところが、もっと細かいところまで求められてきているのが多くの図書館情報学者の所感ではないか。大蔵経データベース*1などは人文系でまさにやっていて目に触れやすいものではないか。テキストデータがあって、そのすべてのところで画像データと結びついていて、もちろん中国語やチベットや現訳から、といったところから、NIIのWeb APIとも連動、NDLサーチも組み込まれていて。なのでテキストを読んでいて、みるとNDLサーチで出てくる論文ともリンクしている。私が見ていて思ったのは、これがオープン化の意味だと。NIIがWeb APIを公開しているからこそ可能になった組み合わせなので、自身を含め、研究ドメインごとに何ができるのかわからない、どういう風になっていて、どう繋がるのか、がみえないのが不安の要因では。そのつながりが見えることが1つの意義では。すべてがオープンになっていったときに何かでうまく繋がってくれれば最終的にはオープンなプラットフォームになるのではないか。今はまだ見えないがつながりうるという意味で、まずは巨大な山をいくつか見て、それではダメな部分、できない部分、long tailの部分、について図書館員がうまくすれば担当できるかもしれないという夢物語を抱いた。
A. (村山)ちゃんと見せていくこと、基盤を作っていくこと、はRDAやEurope Commissionでも共通の問題意識であり課題であるとおもう。

Q. (九州大学大学図書館員) 大学や出版社がデータリポジトリを作らないといけない機運が高まっているが、NIIは何か考えているのか?
A. (武田)現状何かあるかと言われれば、ない。ただ、やりたいとは言っていて、所内では議論もしている。本当にできるかどうかは常々考えながらやっている。やりたいという意識はあるが、それに足る状況にはないので、そこは悩ましいところ。あまりそれができるまで待っているとは言わずに、どんどん行動力のある大学は独自でやってほしい。むしろ九大がやっているから!と言いたいくらい。
A. (村山)long tail small dataについてはNDLのWARPが収集してアーカイブしている。なので3年前の京大のページなどが見られる。自分の仲間のページについて、小規模なテキストなどはホームページの一部として保存していたりするので、そういうのを含めて日本のアーカイブ体制は、実はあるところにはある。ないものはなんだろう?ということを改めて分析したらいいかなとおもう。WARPの各ページにDOIが振られたらよいと思う(笑)。

以上