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#jawphos #jawp 科学史学会2016「ラウンドテーブル:ウィキペディアと科学史――知識とコミュニケーションを考える」

event wikipedia

概要

Wikipedia:オフラインミーティング/科学史学会2016 - Wikipediaの参加メモです。当日のTwitterのハッシュタグは#jawphos。
当日のツイートまとめ(togetter)は以下
togetter.com

※私の聞き取れた/書き取れた範囲の内容です。もし、なにか問題がありましたら、お手数ですがコメント欄などでお知らせください。

本編

導入 組織者及び司会である北村紗衣より、企画趣旨等の説明(5分程度)

利用者:さえぼー - Wikipedia
科学史関連の記事を執筆しているウィキペディアンと、科学史分野のアカデミア関係者(研究者)の意見交換。Wikipedia15周年、調べ物をするうえでのインフラとして定着しつつある。学術情報を生産しているアカデミアのコミュニティと、Wikipediaを普段書いている人たちの関係は、複雑で、良いと言えない側面もある。参加者のうち、「科学史学会会員かつウィキペディアン」は、さえぼーさん含め2名らしい。
信憑性に関して、かなり酷い記事があるのは周知の事実。Wikipediaコミュニティにおいて学術情報は重宝されている一方で、アカデミアの慣習とは合致しない部分もある。アカデミアの立場からすると、Wikipediaの記事執筆で学術情報の参照を行なっている者が一体何者なのか、は興味があるところだと思う(確かに!)。

本イベントのきっかけは「英日翻訳ウィキペディアン養成セミナー」がきっかけとなっている。
作成した記事の例: 1860年オックスフォード進化論争 - Wikipedia

ウィキペディア記事作成のデモンストレーション
「利用者:さえぼー/sandbox」に下書きで記述されていた「ドロシア・リンド・ディックス」を例に、ビジュアルエディターを用いて下書きの移動による新規記事作成。
「いま「ドロシア・ディックス」の記事が誕生しました。」(おおー)

発表(1) 管理者である日下九八が、ウィキペディアの科学及び科学史記事の概要について説明(20分程度)

利用者:Ks aka 98 - Wikipedia
理系出身者で科学史にはもともと興味をもっている。ざっくりとWikipediaとはどういうものか?について話す。
ノートページにおける議論に関する説明として、『「関数」なのか「函数」なのか』で非常に盛り上がった(揉めた)出来事がかつてあったという紹介があった。 Wikipedia:井戸端/subj/「関数」か「函数」か - Wikipedia

  • 記事数は全言語のなかで10位前後で推移している。登録して10回以上編集したユーザーの数など。
  • 日本語版の閲覧者は英語版に次いで世界で2番目に多い。
  • 記事カテゴリとしてはポップカルチャーが多い。
  • Wikipediaについて90%くらいの人が「だいたい信頼できる」と考えているらしい。via. Pew Research Centerの調査(URIメモ忘れ)
  • 2011年時点でのWikipediaの編集者に関する調査。大学卒業者がそこそこ居る(D2. How old are you? の結果紹介) 母数が200程度なので、という話はあるが意外とちゃんとしている人が多い。
  • 日本における過去の調査事例: 樫原真知子, 武宗次郎, 遠藤有美江, 土井亮平. Wikipediaの評価. 慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻上田修一研究会 2007年度グループ研究レポート. 2008.
    • http://doi.org/10.1241/johokanri.55.2 の文献番号9。おそらく上田先生が退官された関係でリンク切れになっている?
  • 司書課程学生に対する信憑性調査(で良いのかな、要確認) ↓


ci.nii.ac.jp

日本語版において充実している記事は、秀逸な記事として選出されているような、少数・特定のユーザーががんばって書いた記事、あるいは、他言語版の翻訳によって記述されたもの、と考えて良いのではないか。

専門家としての執筆

  • 「会話分析 - Wikipedia」は専門家が執筆した記事らしい

★専門家による記事執筆

  • 学問的基礎・前提
  • ニッチな分野、新しい分野の周知
  • 誤解されがちなテクニカルターム
  • 正しくない俗説の否定
  • メディア・コミュニケーション
    • 新聞記者はまずWikipediaの記事を見て取材に…
    • 3.11発生時に地震や原発記事へのアクセスが急増。数日前のPV上位項目はというと、、笑。

www.slideshare.net


日頃から記事を書いておくことが重要。大きな地震が起きたときにマグニチュードの記事を急いで書く、みたいなのはイマイチ。デメリットとしてはよく分かっていない素人に絡まれると面倒くさいとか、批判されるとか、業績にならないとか、色々あるけど。

教育関係者によるWikipedia記事執筆活動などの紹介例

発表(2) 利用者:さかおりが、地方病 (日本住血吸虫症)の執筆について発表(20分程度)

利用者:さかおり - Wikipedia

www.slideshare.net


自己紹介: Wikipedia日本語版の管理者(のひとり)。2009年11月25日に初編集、2012年9月より管理者。本業は旅行業(Wikipediaは趣味)。

特定分野の専門家でも研究者でもない。執筆のきっかけは、地元に関する事項の不足を感じた。なぜないの?だったら自分で書いてみようかな。主な執筆記事の紹介。山梨県の重要無形民俗文化財(新規記事作成、スタブ記事の編集など)、登録有形文化財、地理、天然記念物、指定解除された天然記念物、名所旧跡地、山梨近代史、その他、、(すごい)。現地に行き、図書館に行き、関連資料を集めて記事執筆、といったことを行なっておられるらしい。すごいモチベーション。。

日本住血吸虫症

地方病 (日本住血吸虫症) - Wikipedia
詳細かつアツい説明がありました(実況ツイート参照)。

記事執筆について
  • 現地調査の考え方: ウィキペディアン個人がフィールドワークによって得られた成果物は、それが検証可能性を伴わないものであれば、記事内に直接反映させてはならないと考える。しかしながらフィールドワークは執筆者にとって記事テーマ全体を俯瞰する意味で重要であり、現地の雰囲気を体感することで、記事構成や文章表現等の具体的なイメージをふくらませるのに重要と考える
    • →撮影した写真をアップロードすることについてはOK
  • 資料文献の集め方
専門家の方々と良好な関係構築の期待
  • Wikipediaは執筆編集者個人の研究成果を発表する場ではない
    • 複数の適切な文章や資料内容をもとに、テーマの全体像を分かりやすく総合的にまとめることがWikipedia記事の理想ではないか
    • それに加えて、補助的な説明や具体的数値や事例など、その他の情報を肉付けすることで記事内容をより充実させることとなる
    • そのためには市販書籍、図書館で閲覧可能な文献や資料だけではなく、研究者や専門家の皆さんの研究成果(論文等)が出典として有用に使用できないだろうか
    • 専門家・研究者の方々がまとめられた研究成果のなかで、画像に関してはWikipediaの姉妹プロジェクトである。Wikimedia Commonsに画像がアップロードされている例がある: 地方病 (日本住血吸虫症) - Wikipediaの記事内で使用しているミヤイリガイ画像はまさにこの例。
    • (スライド内の論文参照記述にDOIが使用されていて個人的に感動した)

発表(3) 利用者:のりまきが、日立鉱山関連記事の執筆について発表(20分程度)

利用者:のりまき - Wikipedia
自己紹介: Wikipedia日本語版の一般利用者。初編集は2006年5月6日(10年キャリア!)。管理系には顔を出していない。執筆分野はバラバラ(歴史関係が中心。ただ、生物や地学関係などもそれなりにやっている)。強みは単に歴史ばかりではなく、文化、芸術方面、理系(地学、生物のみですが)など多様性のあるところ

まとめ(1)

  • 使用参考文献数(単行本、論文等の合計)の提示がありました(メモできなかった)
  • 執筆に困ったのは化学・科学分野の文献を読むこと。文献を使いこなせているかが不安
  • 日本語版独自のカルチャー。ガラパゴス化。専門家・外部者の助言が望まれるのでは
  • ウィキペディアンには得意な分野がある→鉄道、地域史など
  • 優れた記事を数多く書いているウィキペディアンとの懇談会に参加した時の驚き: ひとりとして専門者はおらず全員アマチュアだった!→究極の趣味人
  • 専門家の活動の背景には、優れた趣味人という広く豊かな裾野があるからこそ、様々な分野が充実しているのではないか
  • 専門家との共存共栄関係を築いていけるのではないか?

コメント コメンテイターである吉本秀之及び藤本大士によるコメントと質疑応答(20分程度)

藤本大士氏「郷土史家とウィキペディアン」

  • 大学の研究者と郷土史家の協働を提案したい。大学の地域史をやっている者としては当然だが、各地域を扱っている専門家の協力なくして一次史料を用いた研究は困難であるということが指摘できる。
郷土史家とは?
  • 歴史の高校教員を中心としてきたところが多い。科学史・医学史分野では、地元の技術者・医者の活躍が目立つ。
  • 活動の特徴として、一次史料に基づいた「研究」および二次文献をまとめた「伝承」。発表媒体も『地域史研究』などアカデミックなものから地域の広報誌(タウンペーパーに至るまで様々)。
  • 一次文献・二次文献のアクセスのしやすさ: 国立国会図書館にないものは結構ある。自費出版とか現地出版(?)とか。そういったものを集めるのに現地に出向いていると大変なのでWikipediaに情報があるとありがたい。
  • 現状: 郷土史家・郷土史コミュニティの減少、発表機会の減少。高校教員の業務増加に伴い、これまでは空き時間にできていたことが、段々とできなく/起きなくなっている問題がある。
    • →Wikipediaを一定程度活用できるのではないか?
郷土史家としてのウィキペディアン
  • 利点
    • インターネットという無限の発表媒体
    • 郷土史コミュニティに入らずとも、個人でいつでもできる
  • 課題
    • ウィキペディアポリシー(史料に基づいた記事執筆ではなく、二次文献をベースにした記事執筆の症例)により郷土史家の一次文献にもとづいた「研究」と二次文献のまとめによる「伝承」のうち、後者しか載せられない?
    • 個人の活動が中心となるため、情報共有、モチベーション維持が難しい?
    • Wikipedia内での地域コミュニティ「Portal:日本の都道府県」(各地域の執筆者同士の情報交換。どういった場所で文献を探しているか等)
    • Wikipediaタウン(最近は自治体との連携、大学教員(専門家や研究者)などとの繋がりも生じてきている)
  • 佐賀医学史研究会の取り組み紹介
いくつかの論点
  • 科学史学会支部の多様な活動との連携可能性(北海道、東北、関東、東海、京都、阪神、中国・四国)
    • 研究発表、郷土史研究、科学・理科教育、科学コミュニケーション、など多様なものを扱っている
    • 支部を中心として、連携可能性を探る
  • 科学教育・科学コミュニケーションの一環として
    • 授業での記事執筆活動など

登壇者からのコメント(敬称略)

(日下) ローカルウィキがあるので、そちらは検証可能性はWikipediaほど追求されないのでその活用を考える。Wikipediaのコミュニティという言い回しをするが、ちゃんとしたコミュニティがあるわけではないので、連携を考えた時に、京都や九州なら多少、というのはあるが、どこそこで何かやるのでどなたか、と言われた時に、それに該当するウィキペディアンを探す術を持たない。そもそも日本語版の管理者で会ったことある人て何人いる?→5人くらい→なので編集活動をしていて他のウィキペディアンと会ったことがあるっていう人は、鉄道等を除いて、たぶん20名いないくらいだと思うから、連携については方法を検討する必要がある。
そういったことをやりたい人がウィキペディアンになってくれる、というのが起こると嬉しい。
(のりまき) 自分の反省を込めて。立派な活動をしている人であればあるほど個人での活動というカラーが強いと思う。最近になってようやくイベント等に出てくるようになった身であるため、今後可能性を探っていく・発展させていくことを考えねばと思う
(さえぼー) ご自分は郷土史家だと考えていますか?
(さかおり) ない。結果的に地域のことを書いているので、他人から見るとそう見えるかもしれないが、郷土史家の視点として何かを研究しようと言うことになると、やればやるほどWikipediaに客観的に書けなくなることを危惧すると思う。1人だと主観が入ると思うから、コミュニティを作って情報提供や共有・交換が活発に行われるようになれば、いいかも。
(のりまき) No。現住地に関する記事はひとつも書いていない。地域ごとに載っている時期などの旬があると思う。近現代史が面白い記事とか。野菜と同じで、各地域ごとに旬のものがある。郷土史家だったら旬である/ないにかかわらずフォローしていると思うが、自分はそうではない。
(日下) 郷土史家が何なのか?がそのコミュニティにいないとわからないこと。どういうことをしていたらそう呼ばれるのか、何をしているのか。郷土史研究には長い長い経緯・歴史があるはずで、そこに踏み込むのは面倒くさいと考えるのかも。地域のことを調べたい・興味がある、というひとと、郷土史家と呼ばれる人、あるいは郷土歴史館などに居るような人との境界線があるのかも。Wikipediaタウンなどをやっていると、郷土資料館の元館長さんに案内してもらって、そのあと図書館に行って資料を調べて、という流れになるので、漠然と地域に興味がある人とWikipediaを結びつける、ということはできているようにおもう。

吉本秀之氏コメント

  • 百科事典の歴史を調べたことがある。百科事典の歴史のなかで論文を書いた立場として、日本だと平凡社の辞典が有名だと思うが、平凡社が倒産し、再興されているが、わりと大きな百科事典一セットが一家に1つあるみたいな時代は終わったと思っている。
  • 小さいころは百科事典を調べたりといったことをやっていたと思うが、いまの小中高生はほぼ百科事典で調べる行為は、教員に強制でもされないとやらないと思う→物事を調べるツールとしてのWikipediaの存在感。
  • 小学校など、レポートや自由課題などで子どもが調べるのを見ているとWikipediaを写すという行為が見られる。
  • 自分自身、専門外のことを調べるときはWikipediaを調べてざっくりと把握して、それ以上関心があるなら調べる。そうでないならそこで終了する。Wikipedia内容が充実することは、日本語の知識レベルをあげることにはかなり貢献すると思う。
  • 結局、百科事典も誰か個人が書いていて、編集者の手入れがどの程度行われているかはばらつきがあると思う。個人的な直感として、Wikipediaは変な記事もあるが、従来の百科事典と比べて全体的な差はつかないのではないかとおもう。
  • 英語圏で、NASAなどの記事は充実していて、それが好きな人が猛烈に編集しているのだろう。
  • 自分たちの分野の百科事典を作るとき、担当項目数がとても多くなって大変な状態になっている話。あまり確たる自信を持って詳しいというもの以外は厳しいとか、項目としての欠落がないようにすることの重要性などの問題とか。
  • 子どもたちが調べ物をするときに、ある程度多様性をもったカバー範囲があると嬉しい。レファレンスが付いているので調べようと思えば子どもでももっと調べられるはずなので。
  • 専門家との協働については困難な部分もあると思うが、Wikipediaに書いたものをチェックしてもらう・フィードバックをもらう、というのができると良いのかなと考えている。

登壇者コメント(敬称略)

(のりまき) 辞典を作ることに存在する様々な苦労を感じた。熱心なウィキペディアンであれば、調べたこと・知ったことをどこまで書く/書かないを吟味することはある。敢えて記述する/記述しない、まとめる/まとめない。
(日下) こどもの話では、Wikipediaをあまり見るなと言っているのではないか。学校の調べ物学習の時間で、辞書を調べるなどの指導は有ると思う。そこでWikipediaを見るということにはなっていないとおもう。まあでも皆さん見るには見てると思うし、真に受ける真に受けないはある程度リテラシがあると思う。記事のまとめ方や構成については、素人には難しいところがあると思う。相当その分野に明るくないと厳しい印象はあるので、方向性を示す・助言をするという意味でフィードバックが得られると役に立ちそう。生物史など、2~3行あれば最低限記事になる、というようなものについて、網羅性の観点から考えると記事が存在するほうが嬉しいが、立派な/詳細な記事が書かれていないとダメだろうという考え方を持っている人もいるようなので。

(さえぼー) Wikipediaには査読依頼の機能(Wikipedia:査読依頼 - Wikipedia)があり、専門家にコメントを依頼できる。自分もコメントしたことがある。査読を依頼するシステムがあるので、そういったところを読んで専門家にコメントしてもらいたい。コミュニティには喜ばれると思う。
(日下) あまり機能していないような気がする。
それは日本語版独自の機能?→どの言語版にもあるはず。

質疑応答 フロアからの質問受付と応答

1. (アーカイブズ学がご専門で、研究者が残した科学史資料の保存をやっている方からのコメントでした。日本に若い寄生虫学者がいない/いなくなっている話)

2.
Q. ある記事を書く時に背景的なものは他領域/多様な要素が関わってくる。百科事典的な役割を考えた時に、ある程度コンパクトなものであるほうが望ましいように思う。優れた記事は文章が長い傾向にあるように思った。そのあたりのバランスはどうなのか
A. (のりまき) 最初にまとめを示して、あとから詳述していくというスタイルがあるとおもう。
Q. (さかおり) 最初から秀逸・良質な記事を書こうと思って書いているわけではない。Wikipedia内部の話になるかもしれないが、コミュニティとして、まったく意味のない記事を冗長に書くのはダメだが、極力、詳細に書く/ちゃんと書くことが好まれる土壌はあるとおもう。Wikipedia:秀逸な記事 - Wikipediaという項目もあるが、そこでも「概して長文になるな」というのはある。記事全文を読まないと分からないというものではないし、概要節を読めば分かるだろというのは有ると思うが、人物記事や伝記等については、長くならざるをえないと思うし、省く/詳述するのバランスは難しいと思う。これは今後の議論になるかもしれないが、コミュニティの中で答えを出すのは難しいように思う。
A. (日下) Wikipedia:ウィキペディアは何ではないか - Wikipediaという記事がある。アクセシビリティの問題で、ある程度大きさで分割するのが良いかなと思う。記事として分割できる状態になっているほうが好ましいのではないかと思う(システムの問題?ごく初期の頃はあったという話らしい)。2007年ころから、立派な記事を書く人が増えていって、記事の長大化が進んでいって、いわゆるサブカル系の記事の登場人物(アニメの登場人物)とか、それに対する反発とかが(どちらかというとちゃんとした項目を書いている人から)あって、記事の長さに対するスタンスは様々だと思う。
小さい記事しか書けなくて、出典もなくて、みたいな人に対して反発が高まった記事もあった。それぞれがどんな記事を書くかを考えながら収束していくといいな(でも、20年30年かかる気がする)と思っている。

4.
Q. 大学の教育で使えないか?ということを考えている。英語から日本語で翻訳を行なっているという報告がさえぼーさんからあったが、非常勤先で講義を持っている。課題の1つ(オプション)として記事作成や更新、ブログ執筆などを設けている。やってみた印象として、既にWikipediaをやっている人は中高生でもできる、今までやっていない人に参加する方法のレクチャーなどは行なっていないので、新たに参入する人が少ない気がした。多様な学生がいるなかでWikipediaを使うことについて、きいてみたい。
A. (日下)時実先生ほか、報告事例がある。表に出てきていない部分で出てきているのは、アカウント名として本名を使用している光景をみて「大丈夫かな?」と心配になるパターン。出典を伴わない編集になってしまう人もいて、先生もそのあたりを予想していなくて、ウィキペディアンから「直して欲しい」と言われて、返事をしなかったりするとブロックされるとか、IPアドレスのレンジがだいたい決まっているので広域ブロックが適用されて大学単位で編集できなくなったりとか、そういうのはある。。どこの授業でやっているのか全く分からないままやっているので担当者が分からず、IPアドレスから引けば学校名は分かるんだけど、担当者はわかんない、みたいな。本名登録ユーザーをツテに調べたら担当者と接触できたとか、そういう面倒事がある。できれば事前に一声かけてくださると嬉しいのと、理想的には、検証可能性などの基本事項について一巡してから授業に取り入れてもらえるとトラブルを減らすことができるかなとおもう。トラブルが起きると評判が下がりかねない部分があると思う。コピペしてたりすると大学などの評価につながりかねない部分もあると思う。相談してもらえれば、何を押さえて欲しいとかはアドバイスできる
A. (さえぼー) 1年やった経験があるのでアドバイスを求められたらお助けします。Wikipedia上で授業用の下書き用ページ(プロジェクトページ)を設けると良い。ウィキメールを活用すると良い。著作権絡みの削除が多いので、著作権はしっかり押さえること。翻訳に限っては履歴不継承を除いて削除の心配が少ないので良い。ゼロから作るのは大変だと思う。他言語版に項目があるものについては特筆性の問題がクリアできるし。。

Q. 紙製の百科事典を比べた時に、紙製も信頼性が高いとは言え間違っていることもある。Wikipediaのような存在の登場によって、どれもカンペキではないが信頼度がそれなりのものが複数登場しているのはいいことだと思う。Wikipediaが良いと思うのは、画像について、日本の出版者よりも処理がマトモだとおもう点。日本の出版者の慣例には難があるような気がする。CCとか出典明記とかね。
A. (日下)日本の出版者は、引用で良いことについて本人への許諾を取りに行って面倒を巻き起こしているように思う。Wikipediaでは画像の引用が凄く難しい。英語版ではfair useがあるが、日本語版だと、本文中で使う分には引用でどうにかなるかもしれないが、fileしかないページがあったときに引用として成立するか/商用利用を圧迫すると言われた時にどうするか?などの問題が有ると思う。画像の引用については議論になっていて、できないのではないかと考えている。Wikipediaはライセンス上かなりしっかりやらないといけないので、という事情から来ている部分もあるように思う。
日本で発行されている学会誌でウェブ上でアクセスできるようになったものは増えたが本当に自由に再利用できて〜というのが明確に提示されているのは九州女子大学の紀要しか無い。

5.
Q. 大学の話で、Wikipediaではないが、情報リテラシーの授業で、はてブのことを学生に教えようと思った。学籍番号でIDを作って、同じ記事をブクマさせたら、IPアドレス帯と類似IDからの大量ブックマークということでBANされた。あとではてなに連絡して謝罪したが。。入門用ページのようなものを作って練習できるような状態になると良いかも。はてなに関しても同様のことがあったが、連絡先が分かんない、問い合わせ先がわかんない、というのがある。そのあたりがクリアになると良いかと思う。
項目の選び方も難しい。ある程度の数が必要だと特に。
A. (さえぼー) 120ほどの記事を作って死にかけたので、大きなものをやろうとしすぎないことも大事。

6.
Q. 人文社会系において自分の知識を披露するのは厳しい。業績にならない、お金にならない、書いても「なぜ知ってるの?」「そんなの常識でしょ?」といった揉め方をする可能性がある。そうすると必要な事項が記述されない。出典がやたらと厳しいとか。。
日本語版にだけ「ない」という学術系の重要項目が有ると思う。アニメはやたらと充実してるんだけど。。教養として使いづらいのが困っている部分。科学史学会との協働ができると良いと思う(それはそれで難しそうなところはあるんだけど)
A. (のりまき) 台湾の蒋経国に関する記事を書こうとしたら、中国語が読めないので難しいということがあった。大穴が開いているのでどうにかしたい。裾野を広げていくような活動に協力してもらいたい。
A. (さえぼー) サブカルチャーは比較的充実しているが、「アニメーションの歴史」はない。アニメの歴史 - Wikipediaはある。学者にできる情報提供として、先行研究のまとめを論文/博論でやると思う。先行研究の持ち込みのレビューとかだと、独自研究で削除される可能性はなさそう(自分の書いたものを持ち込む場合には別途手続きが必要ということ?)
参考: Wikipedia:すべての言語版にあるべき項目の一覧 - Wikipedia

7.
Q. 学会からの執筆の参加ということで土木学会が例にあがっていた。事故が起こるまえでは良いことだと思っていたが、中立観点とかを強調しておかないとバイアスのかかったものになるのではないか。

Q. 史料を記事に反映させたいような場合。内部で配られたのみ、というような写真をWikipediaに反映したいときはどうするか?コピー等を持っておいて国立国会図書館に寄贈して、それを参照するようにするというアプローチがあるようにおもう。
A. (さえぼー) 架空出典という事件があったので国立国会図書館への寄贈は良いのではないかと思う

8. 海獺さん
Q. 3.11のときに白紙保護化したときがあった。速報的に、デマかどうか分からないことを多々書き込んでしまう人がいる可能性があるので、善意をもって白紙化保護したときがあった。記事のノートページにジミー・ウェールズ御大がやってきて苦言を呈され、アカウントを登録してしばらく経ったユーザーのみが書けるように変更された。
(半保護になったということでよいのかな?事実誤認だったらごめんなさい)
togetter.com

ジミー・ウェールズ(Jimbo Wales、ジンボ・ウェールズ)による投稿:ノート:東北地方太平洋沖地震/過去ログ1 - Wikipedia
当時の白紙化保護状態のページ(過去の版): 東北地方太平洋沖地震 - Wikipedia

修正・変更点など

1. 2016年5月29日16時40分頃に一部修正を行いました

2. 2016年5月30日追記: 講義や授業等を通じてWikipedia編集を企画するような場合に向けた記事が立ち上がったようです。
Wikipedia:教育プログラムでウィキペディアを執筆する - Wikipedia
これは前述の「質疑応答 フロアからの質問受付と応答」の4番目に関連するものです。
(参照: 海獺さんのツイート)


3. 2016年5月30日追記: typoを一部修正(気付いた範囲で直しましたが、分量がそこそこあるので多分まだまだ残っていると思う。もっとも、こういうのこそwiki的なシステムで編集管理すれば良いような気はしますが…)。

4. 2016年5月30日追記: togetterへのリンクを追加

5. 2016年5月31日追記: ジミー・ウェールズによる投稿、白紙化保護、の2点を追加

6. 2016年6月1日追記: さかおり氏の発表資料を追加

20160206 大向一輝先生「All about CiNii」

概要

筑波大学 知識情報・図書館学類の集中講義「知識情報学特別講義I」にて、国立情報学研究所の大向一輝先生(@i2k)からCiNiiのこれまでについて講演を拝聴する機会がありました。そのときのメモを公開します。こんなにじっくりと時間をかけてCiNiiについて話したことはないし、自分のなかでもまとめ直しを行う機会になった、と仰っていました。

※Internet Archive Wayback Machineを併せて参照するとイメージが抱きやすいかもしれません。

講演内容

自己紹介

CiNiiの「なかのひと」になるまで

  • 2005年に就職して初めてCiNiiをうちがやってたんだ!ということを知った。言われてみれば確かにNIIという単語がサービス名に含まれている。
    • 「僕から見たら結構ひどいサービスで、確かに論文を探すために使わざるを得ないサービスではあるけど、使っていて楽しくない。こんなの誰が使うんだ?」
  • 僕がNIIにいて、ウェブ系であるということは、他所の人から「あれってどうなんですか?」と言われることを意味する。ちょっと許せない。
    • やってる部署に文句を言っていたら「そこまで文句を言うならやってみろ」と言われ、開発に関わるようになった。
    • 少なくとも学生の頃にはこういうことをやることになろうとは微塵も想像してなかった。それが結局2005年ころからやっていて10年が経った。
  • オープンデータ、データ公開には守りと攻めの両方がある。あと1、2年すると、オープンデータ、オープンサイエンスと大学図書館はどう付き合うのかみたいなことが大きな課題になってくるだろう。

CiNiiの運用体制について

  • Q. 何人くらいでこの仕事をやっているの?
  • A. 15人くらい。1サービスあたり1.5人で面倒を見るということになってる計算。当然、自分たちでプログラミングまではできないので外注する。ただし、企画(どんなものが必要か検討)とか、障害対応などは行なっている。

これまでのCiNiiの歩みを振り返る

2005年「サービス公開」

サービス公開(実際には、2004年には試験公開していた?)

2006年「パーマリンクとオープン化」

これまでは書誌情報の公開に制限があった。書誌情報くらいはいいだろう、本文ならともかく。それまでは検索結果一覧までしか見られず、書誌情報を見るためには契約が必要だった。
ここでGoogleがきた。Googleはそんな公開されていないページを検索結果に反映しないし、できないので。そのために必要な準備としてパーマリンクの制定と、書誌情報のページに誰もがアクセスできるようにすることがあった。
書誌詳細画面を綺麗に、当時のHTMLは大向先生が自ら書いた。

2007年「黒船到来とアリ地獄作戦」

当時、いわゆる檄文を書いた。いま見てみると、怒っているのはよくわかるんだけど。。
要点はパーマリンク、きちんとしたURLをつけること。そうすると検索エンジンから誘導が可能で多くのアクセスが期待できる。そのパーマリンクは有料ユーザのみに公開ではなく一般に公開しよう。そのときにHTMLをちゃんとしよう、本文への誘導をちゃんとしようとか、そういうことが書いてある。
Googleに喰われるかもしれない問題は、CiNiiがそのまま全く無視されるわけではなく、どんな入り方をされても最後に到達するのはCiNiiのパーマリンクなんだ。だから検索画面はスキップされるかもしれないけど、パーマリンクへの経路を増やすことをやらないといけないのであって、連携したほうがいい。

2008年 「暗黒時代」

平成19年4月、Googleに解放された。それまでは月間100万アクセスしかいかなかったが、伸び方が爆発的に増加した。その影響で、コンピュータが停まるようになった!(嬉しい悲鳴)

2009年 「"まともな"ウェブサービスへ」

サービスのまとも化。落ちないようにするとか

2010年:「サービスのうしろに人がいる」、「人と論文(著者検索)」

ウェブサービスは人間がやっているようにあまり思われていない気がする。たとえば、Googleとか食べログとか、人間がやっているように思われない。機械がやっているから機械が全部やっているような気がしてくるけど、本当は、人がいて、人の思いがある。それを利用者に実感してもらうことは大事。
Twitterアカウントを作成したにぃ。CiNiiの読み方が分からない→「サイニーです」と延々とリプライするのが初代なかのひとの仕事。



著者検索実装(同定識別が課題に)、Yahooと連携した「Yahoo!論文検索」、のちにYahoo!爆速化に伴ってリストラ。

2011年 「知識インフラとは何か」、「図書館の本丸へ」

震災に伴う停電によるサービス停止。当時の停電のスケジュールが書かれたホワイトボードは今でもとってある。

参照: #がんばれCiNii #がんばれNII #祝CiNii復活 - Togetterまとめ

2013年「レガシーからの脱却」、「仮想化」

NACSIS WebcatはCで実装されているらしい。コンパイル後のバイナリコードはあるけど、元のソースコードがどこにあるのかわからんとか、前担当者の独自機能が実装されていたりとかするので、メンテナンスが大変だった。
→もうCiNii Booksにしちゃおう。NACSIS◯◯がいいんですけど、とかいう意見もあった。「NACSISってなんですか?僕が就職したのはNIIなんですけど」(この件は2015年の第17回図書館総合展フォーラム「2020年のNACSIS-CAT/ILLを考える」でも話題にあがった。)

2014年「制度面でのオープン化」、「UI/UXと"いいもの使ってる感"」

目録所在情報サービスにCCライセンス付与(利用条件の明示, 目録所在情報サービス )
CiNiiデザイン変更(Articlesは緑、Booksは青、フラットデザイン)

2015年「CiNii Dissertations開始」、「スマホ対応」

博士論文検索Dissertationsの公開(スペルが難しいのでURIには使わず、/d/とした)
スマホ対応(レスポンシブデザイン、Dで試行し、その後、A、Bに導入)

CiNii Dは特殊な位置付け

  • インターネット上での原則公開化 データはこれから出てくる。
  • いまは探すことがそんなに一般的ではない(意味が無い、引っかかっても中身が見られないから)としても、今後は本文見られるようになる。
  • ニーズがあれば実装できますよというプロモーション的な側面もある。
  • オープンサイエンスの話もしたが、学術情報流通の世界においては新しいものが色々たくさん降ってくると考えられる→NIIとして対応できることを示す
  • もちろん検索できて便利という側面はある。完全にユーザのためだけ、ということではない。立ち位置の微妙な違い。
最近のご自身の研究について
  • 同姓同名の論文分類
    • 同姓同名はすごく難しい。
    • 日本人のなかで研究者の同姓同名が最も多いのは、「高橋徹」(KAKEN - 研究者検索結果)。
    • 「高橋徹」さんが20人くらいいる。あらゆる分野に「高橋徹」さん。

20160226 KEIO大学図書館国際フォーラム: 研究支援と図書館 ~研究サイクルを取り巻く「混沌」に図書館はどう向き合うか~

2016年2月26日に慶応義塾大学三田キャンパスにて開催されたKEIO大学図書館国際フォーラム(年1開催、今回が2回目)でのメモを公開します。例によって粗いメモです。
講演者は、OCLC Researchのコンスタンス・マルパス氏、ORCID Asia-Pacificの宮入暢子氏。

概要

-開催趣旨-
研究成果の質と量がランキング等の大学の評価に直結するようになり、研究力強化への図書館としての積極的な貢献が重要な課題であるという意識が定着しつつあります。この課題への取り組みは欧米において進んでいる感がありますが、日本国内でも、文部科学省の有識者会議において研究データの利活用への図書館の積極的な関与の必要性が言及されるなど、図書館が研究支援で果たす新たな役割への要請が高まってきています。
そのような状況の下、研究サイクルに目を向けると、一連の過程を支援する有用なツールやプラットフォームが日々出現し群雄割拠の様相を呈していますが、多くの図書館では、この変化に関与していくと言ってもどこからどう取り組んだらよいものか、手をこまねいているのが実情ではないかと思います。
今フォーラムでは、まず、この課題についてのOCLC Researchでの最新の研究成果をベースに、「研究支援と図書館」を取り巻く状況を概観します。次に、具体的な取り組みとして、今後の研究成果の管理・利活用に不可欠な要素である研究者IDの代表格である「国際研究者識別子ORCID」について、基本的な解説とともに研究の現場でどのように活用されているのか、図書館との接点をどう見出せるのか等について共有します。そしてこれら講演の内容を踏まえた上で、今後に向けての議論を行いたいと考えています。
今回の企画が、日本での「研究支援と図書館」の関わり方・スタンスを今後考えていく上での一助になればと思っています。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

慶應義塾大学メディアセンター | メディアセンターについて | 第2回KEIO大学図書館国際フォーラム

コンスタンス・マルパス氏「Library Support for Research Information Management some emerging trends」

大学図書館の蔵書の価値(に関する変遷)、国ごとの学術研究活動を取り巻く環境(ファンディング等)の違い、研究活動活動の発生と普及、大学URAのこと、図書館の位置付けの変化(以前: 図書館という環境のなかに利用者がいる。現在: 利用者の環境のなかに図書館がある、あるいは、利用者に対して図書館が参与?していく)、ResearchGateおよびResearchGateにおける大学ごとのグループの話、researchmapや機関リポジトリ等の話題、研究データやメタデータ、識別子の話題など、たくさんの話題がありました。
私個人の関心はデジタル識別子にあるので、その内容だけですが、印象深かった点について。

  • 研究成果に対する識別子(DOI)。研究者(ひと)に関する識別子(ORCID)に続いて、組織の識別子が必要になる。
    • たとえば、各大学、各部門、あるいはビジネススクールといった対象・粒度の識別子。
    • 識別子についてはスコープによる3つのレベルがあり、それぞれ、「local identifier」(組織内あるいは特定のシステムの中でのみ機能する識別子。つまり他のシステムとの互換性のない識別子)、「national identifier」(特定の国や地域のなかでのみ通用する識別子。たとえば日本の科研費申請番号)、「global identifier」(国や地域を越えて通用する識別子。たとえばORCID ID」がある。これらを日本語訳するとどうなるのだろう?という疑問はあるが、とてもわかりやすい表現だと思った。造語的なものなのか、広範に通じる用語なのか、どちらなのだろう?
  • ORCID iDについて
    • カーネギーメロン大学の図書館は、昨年あるキャンペーンを行った。教職員に対してORCID iDの入手を支援し、その識別子を機関内の識別子と紐付けるということを行なっている。
  • figshareについて
    • 研究成果すべてに対してクレジットを与えるfigshare、学術研究活動を構成する様々な形態の成果が含まれている。
    • 大学以外のインフラにいかに依存するようになったかを示す好例だと思う。従来型のモデルである、図書館の管理/運営する機関リポジトリとは異なるムーブメントだから。研究アクティビティやそれにまつわるデータを扱う大学図書館を考える上で重要な知見である。

宮入暢子氏「ORCID: connecting research and researchers」

  • ORCIDについて
    • ORCID Asia-Pacificのスタッフ、アジア担当のスタッフは、現在、香港にいるサポートスタッフと宮入さんの2人のみ。2名で、ニュージーランド、インド、パキスタンあたりまで広範囲をカバーしている。
    • ORCIDの発足について: 2009年の終わりに、研究者識別子サミットが開催された。そこでのディスカッションがきっかけとなって2010年にORCIDという組織が発足。とにかく名寄の問題を解決することに注力した組織である。
      • 「ORCHID」という蘭の花を意味する単語があるが、ORCIDはスペルが違うのでご注意を。
      • ORCIDは研究者プロフィールサイトではない。
  • 「著者名の曖昧性の問題(Name Ambiguity Problem)」とは何か


(共著論文で)「僕は38番目の著者なんだよ」「わあ、そいつはひどい」「ああ、それだけじゃないんだ。共著者のうち、Wangという姓の38番目なんだよ。」「オー(Ohさんと掛けている)」
日本人の名前でいうと、田中宏和さんは同姓同名がたくさんいるという話題がある。
田中宏和さん

田中宏和さん

  • ORCID iDの登録数の推移
    • 配布資料中のs14、Over 1.9 million researchers have registered for an ORCID identifier.
      • 右肩上がり。
      • オレンジ色は研究者自らが手動登録した場合を指す。
      • 緑色(65%)は、第三者機関(たとえば大学、出版社、研究助成機関など)が何らかのシステムを作り、そのシステム経由してIDが発行された場合を指す。
      • 青色は大学等の機関が一斉にIDを振ってしまいたいということでバッジで処理した場合。これはうまくいかなかったので現在は使われていない。研究者自らがコミットすることが重要である。
  • ORCID IDの入力にはWeb APIを経由する
    • ORCID iDを第三者機関に渡す時にマニュアルで入力して渡さないこと。
      • OAuthみたいな仕組みを使って渡す/認証を行うことを推奨している。それ以外はやめてくれと推奨している。
      • 他人のIDを入れたり、あるいはミスタイプしたり、といったことが起こりうるし、それを検証する術がないため。
      • マニュアルで入力する実装が行われているウェブサービスもある。例えば、researchmapが該当する。実装を変更してもらえないか交渉を行なっているのだとか。
      • 仮に実装が変更されるとして、既に入力されているデータはどう扱うのだろう?、そもそもresearchmapにORCID iDを入れている人はどれくらいいるのだろう?(あまり多くない気がするが)ということが気になった。

ディスカッション

司会進行は市古みどり氏。ディスカッションのメモについても、私にとって印象深かったところのみです。他に、人材(スタッフ)やマネジメント(お金のことも含め)に関する話題もありましたが。

はじめに復習を兼ねて質問をする……前に、プレゼンを行った二人に補足したい事項、不足していた事項など確認する。お互いのプレゼンに対するコメント、あるいは、補足したいことなどがあれば。

マルパス氏: プレゼンのなかで話したことではあるが、更に補足する。大学図書館の課題は、大学全体の学術研究支援の情報マネジメントのサポートがある。また、個別の研究者に対する支援も非常に重要であるし、実際に、この点で図書館が積極的に動く、あるいは、積極的であると見られること、は大事。これらは必須。さらに、日本の機関リポジトリインフラがもつ特徴的な事項に触れておきたい。機関リポジトリを最近政府から出されているオープンリサーチに関する関心事と惹きつけてこの動向を見ていきたい。アメリカでも研究大学図書館において既存の機関リポジトリインフラを使って国レベルで求められているオープンサイエンスの要請に答えようとはしている。しかしアメリカにおいては個々の機関リポジトリのレベルは多様でばらつきがあるので、それに比べて日本の機関リポジトリのネットワークは非常に強固であり、国の要請に応えるためにJAIROも存在している。日本のほうが強固な基盤を持っているのではないか。日本の大学コミュニティが国のマンデートに答えよう、支援しようとしていることは非常に興味深い。日本のこれまでの努力のレベルと、コンソーシアムあるいは国家レベルでやってきたことがこれからどのように進展するのかは個人的にも注視したい。

宮入氏: 海外の事例については話したが日本の状況は話さなかったので触れたい。ORCIDは研究者が個人レベルでIDを取得する(完全無料)ほかに、研究機関あるいは出版社などからORCID memberになっていただいたところから会費を取るということをしている。400以上のmemberがいるが、まだイーブンになるにはほど遠い状況。
memberを増やしていきたい。NII,JST、2つは私企業、NIMS(昨年9月、最新member)の5機関がmember。正式サービスはNIMSのサービスが最もAPIを駆使してよく作ってあるのではないかと思う。これは年度が変わって4月のお披露目と聞いているので。
よくいただく質問として、researchmapやresearcher resolverとの連携がある。マニュアルで入力するのは困るといったが、それを地で行っているのがresearhmap。これはJST、NIIにお願いをしている。
プライバシーの説明をしなかったので説明したい。各アイテムに3つのオプションがあり、1.完全public(誰でも見られる、サーチエンジンも拾う)、2.自分にしか見えない設定(あまり意味、必要性はないかも)、3.trusted party?(一般には公開されていないしウェブからも見えないが、ログインして認証してトークンを渡した機関からは見てもらえるというオプション。研究者がガンガンデータを流したくはないがpublisherや大学、助成金支援機関には使って欲しい、といった場合には使えるオプション)。
性別や生年月日を入れるオプションはない。メールは入力できる(プライバシーオプション可能)。どこに所属しているが、どこの所属であるか、どういった出版物があるのか、といったことは公開情報に近い気がする。これらをきちんと使ってもらえるようにする、というのがORCIDデータ。なのでsensitiveなデータは置いていない。

宮入氏: 図書館に話をするとURAの範疇なのでURAにいってくれ。URAに言うと図書館に言ってもらえないとなんとも、みたいな対応がある。figshareみたいなものがあるとき、大学として、データが散逸してしまう問題にどう向き合っていくか?
マルパス氏: トレードオフ。確かに現在、研究者のコミュニティのなかでSNSの利用が高まっていて、こういったものが受け入れられている状況がある。Academia.eduやresearchgateには触れたが、そのほかにもMendeleyやGoogle scholarなどもある。研究者自身が投稿するというものについて、大学図書館が運営する機関リポジトリではなく、自らが自由に投稿するサービスのほうが成功してきているということを念頭に置く必要がある。なぜ外部のサービスが積極的に利用されているかについては注視する必要がある。研究者が求めている機能や特性があるのだとおもう。機関リポジトリについてそれほど研究者が利用しないことはなぜなのか考える必要がある。求める機能がないとか特定の機能がないとか。特定の研究者が外部サービスを使っているという状況から、機関リポジトリを使うように呼び戻すことが可能かどうかについては、大学が同じレベルのものを提供することがない限り難しいと思う。外部のリポジトリやプラットフォームが利用されているという状況をまずは認識する必要がある。同時に、個別の研究者が外部サービスを使っていることにメリットがあるということがあるのは確かだが、商業的な、外部のサービスが引き続き存続するかどうかは疑問が残るところなので。これは研究者にとってもトレードオフ。保証はまったくないわけなので。図書館がやってくれるように、研究者が発表するのを支援してくれるようなサービスが存続する保証があるかどうかを踏まえる必要がある(?)。
最後に付け加えたい点としては、インフラに関するリテラシー。インフラに対するリテラシーは確かに図書館が支援できる分野だと思う。figshareのようなインフラに関しても様々な属性があるということを認識する必要があるとおもう。プレゼンのなかで図書館は意識的にスチュワードシップのコーディネーションをしていく必要があると申し上げたが、figshareのようなリポジトリというのも大学のような研究機関のインフラの拡張版として捉えることが可能であることを認識する必要がある。実際にfigshareは研究機関向けのサービスもあるので、機関によってはデータインフラをfigshareによって運用している例もある。こういった商業インフラを悪いと言っている訳ではなく、こういったものを使うことに伴う諸条件を認識する必要があるという話。
アメリカやイギリスで機関リポジトリに移行が発生している。機関リポジトリがある機関において包括的なアーカイブであることを求める期待から、状況が変わり、機関リポジトリの機能はその機関の書誌情報(bibliography)であるということを求める動きに変わりつつある。なので、コンテンツのリポジトリではなくメタデータのリポジトリであるという風に位置付けが変わっているということが起きている。もともとはコンテンツの包括的なアーカイブであろうと言う期待があったが、これを研究者なり教員が自ら投稿するということで実現しようと言う試みは失敗に終わったと思っている。また、現在はリポジトリのインフラの一部でなければならないという、出版に関する環境において、方向性が力強く働いているということに対する認識もあるとおもう。カリフォルニア大学やオクスフォード大学では、機関リポジトリはメタデータのハーベスティングをするためのものだ、という位置付けに変わっており、教員の出版物に関する情報は外部のリソースを使ってやっていこうと言う風に位置付けが変わってきている。なので、機関リポジトリの機能や、何を求めるのか、管理の方法、といったものが変わりつつある状況にあると言える。
ということで、機関リポジトリをコンテンツのアーカイブとして使うということに関しては、外部のサービスで実現していこうと言う動きがあるなかで、figshareの重要性が高まっている。figshareは一般的にどんなものでも投稿できるという性質があった。研究データマネジメントツールとして使えるという素地は元々あったのだとおもう。figshareで最も多く使われているカテゴリはデータセットなので、figshareにデータセットを投稿したい、投稿して満足する、といったニーズが多いのであれば、figshareを機関のデータセット置き場として使おうという動きが出てきたのだと思う。ORCIDについては、グローバルなインフラということで、様々な媒体で公表してきた成果をORCIDにインテグレートしようという動きがあるとおもう。

宮入氏: 商業サービスとしてのresearchgateやfigshareについては立ち上げた人は元々研究者で、使いやすい/使いたいツールがなかったから作ったというところに端を発するもの。大学に身をおいているわけでもなく研究者でもないような自分のような人間にとってはfigshareに投稿するというのはごく自然な動き、しかもDOIが登録されてサムネイルまで付いてウェブサイトに簡単に埋め込めるみたいなサービスはあっただろうか。他方で、NIMSのように使い勝手の良い、レベルの高いサービスを展開しようとする動きもある。

以上